2007年に結成された2人組ロックバンド「Amazarashi」。
「生死」「絶望と希望」など、深いテーマを詩的な歌詞で表現するスタイルは、幅広い層から支持されています。
これまでAmazarashiが世に送り出してきた数多くの楽曲のなかで、人気の曲や隠れた名曲が知りたい方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回はAmazarashiの人気曲をランキング形式でご紹介します。
あわせて、Amazarashiが気になっている方にぜひ聴いてほしい、隠れた名曲も見ていきましょう!
Amazarashiの人気曲ランキング2024
まずは、公式Youtubeチャンネルの再生数や歌詞検索数を参考に、人気曲ランキングをご紹介します。
1位 季節は次々死んでいく
Amazarashiが一躍有名バンドとして知られるきっかけとなった一曲です。
アニメ「東京喰種 トーキョーグール√A」のエンディングテーマに起用されたことで話題となりました。
公式Youtubeチャンネルでも5760万回再生を超えており、Amazarashiの楽曲のなかでも圧倒的な知名度と人気を誇っています。
なんといっても印象的なのが、曲名にも採用されている歌い出しのフレーズ「季節は次々死んでいく」。
一般的に季節は「めぐる」「流れる」「すぎる」といった表現が使われますが、「死んでいく」という言葉を使うことで一度過ぎ去った季節はもう二度と戻らないことが強調されています。
歌詞には「泥に足もつれる生活」「最低な日々の最悪な夢」というフレーズが出てくることから、この曲の主人公は生活に憂鬱さや鬱屈感を抱いているようです。
楽しさや希望のない毎日がただ過ぎ去るだけの日々が、「季節が死んでいく」という言葉で表現されているのではないでしょうか。
しかし、曲の後半では「生きる意味などは後からつく」「行こうか戻ろうか悩みはするけれど 歩き出す背中 そうだ行かねばならぬ」という言葉が。
いまこの瞬間に目を向けると、希望や生きる意味が見えないかもしれないけれど、それでも進んでいこうという前向きさが垣間見えます。
そして最後には「季節は次々生き返る」と、ただ死んでいった季節も主人公が希望を抱いた途端に意味を持ったことが表現されているのです。
退屈な毎日に生きる意味を見出せない人も、この曲を通して少し前向きな気持ちになれるのではないでしょうか。
2位 空に歌えば
アニメ「僕のヒーローアカデミア」2期オープニングテーマとなった楽曲です。
この曲の歌詞には、「未来へ、足掻け」「この人生は生きるに値する」と、今は苦しくても前に進もうというメッセージ性が込められています。
僕のヒーローアカデミアは、ヒーローを目指しつつも能力がなかった主人公が、努力の末に能力を手に入れるストーリーですので、この歌詞と通ずる部分がありますね。
曲の最後、「有限 有限 残り僅かな未来だ それ故、足掻け」という歌詞からは、いつか終わりが来る人生だからこそ一生懸命に生きていこうという勇気を貰えます。
3位 スピードと摩擦
アニメ「乱歩奇譚 Game of Laplace」オープニングテーマとなった楽曲。
曲名の通りスピード感とアグレッシブさがあり、Amazarashiとしてはやや珍しい曲調です。
ボーカル・ギター担当の秋田ひろむさんは、インタビューにて「江戸川乱歩をテーマにしたアニメということで尖った曲調でもいいかと思い、この曲を提出した」と語っています。
スピードが上がるほど危ないと思う反面、焦ってさらにスピードを上げてしまうというのは、誰しもがさまざまな場面で味わう感情ではないでしょうか。
「国道沿いのラブホテル トワイライト純潔で 言葉足らずの夜明け 吃音的な世の果て」など、曲のいたるところでまさに車窓から次々に流れる景色を見ているようなスピード感を感じます。
文学的な表現はそのままに、いつも繊細さを良い意味で捨て、感情をまっすぐに聞き手に届けるような楽曲です。
4位 スターライト
文豪・宮沢賢治の作品が深くかかわっている「スターライト」。
「Amazarashiらしさ」が全面に押し出されており、ファンからも高い人気を誇っている一曲です。
印象的なのが「胸が張り裂けそうな別れも 死にたい程辛い時だってあったろう」「『ここが始まりだ 始まりだ』って涙堪こらえたよ」「言い換えれば全部が僕次第」の部分。
絶望の中で涙を流しながらも、希望を持って進み続けるという強いメッセージ性に胸を打たれた方も多いのではないでしょうか。
「いつか全てが上手くいくなら 涙は通り過ぎる駅だ」という最後の歌詞は、悲しいことや絶望することがあっても、最終的に上手くいけばそれらは通過点に過ぎないということが表現されています。
辛さの中でも先の希望を見据えて歩いていこうという気持ちになれる名曲です。
5位 僕が死のうと思ったのは
この楽曲は、歌手・中島美嘉さんへ提供された楽曲であり、Amazarashi ver.も発表されています。
曲の主人公は、行くことも戻ることもできず、ただ現在地から動けないまま死を考えているようです。
死にたい理由を淡々と述べていくような歌詞になっていますが、そのどれもが死に直結するとは思えない些細なこと。
「これといった理由は無いけれど、全てが死の理由に感じる」というリアルな希死念慮が伝わってきますね。
「ベッドの上で土下座してるよ あの日の僕にごめんなさいと」という歌詞では、無気力にベッドで蹲る様子を土下座と捉え、「理想の大人になっていないことを過去の自分に謝罪している」という表現になっています。
しかし、最終的には「あなた」という存在が出てきたことで、「世界を少し好きになったよ」という主人公。
恋人か親友か、「あなた」の正体は明言されていませんが、大切にしたいと思える存在のお陰で死にたいという気持ちが落ち着き、生きていく希望を持ったことが想像できます。
6位 カシオピア係留所
漫画「チ。」が展開する往復書簡プロジェクト『共通言語』第二弾として書き下ろされた楽曲です。
チ。は、天動説が主流の世の中で、地動説を唱える主人公たちを描いた作品。
現実世界でも、天動説こそが正しいとされる中で地動説を証明しようとした科学者たちは、ときに迫害を受けながらも研究と主張を続けました。
歌詞に登場する「この好奇心が身を滅ぼすと知ったとしても」というフレーズ。
これは地動説を主張することで迫害や刑罰の対象になるとしても、証明するまでは諦められないという作品の登場人物たちと重なります。
そして後半にある「痛みの堆積が歴史だ それが僕らの最初の武器」という言葉は、たとえ世間から白い眼で見られても、戦い続けることが「正しさの証明」の一歩であるというメッセージです。
7位 アンチノミー
アニメ「NieR:Automata Ver1.1a」のエンディングテーマとなった楽曲です。
「アンチノミー」とは二律背反ともいわれ、同じ事象から生じた2つのものが、矛盾しながらも存在することを意味します。
NieR:Automataは、宇宙人(機械生命体)と人類(アンドロイド)の戦いを描く人気シリーズ。
機械生命体とアンドロイドに共通するのは「感情を持たない機械」だということです。
アンチノミーの主人公は、「感情は持たないでください」「自ら選択しないでください」「知性は持たないでください」とプログラムされています。
しかし、徐々に「震えるこの心は誰のもの」「君と僕の違いは何?痛み喜びもこんなに似てる」と、感情が生じているような描写が出てくるのです。
感情を持たないはずなのに、いつの間にか感情が生じ、「機械」という自分の存在に疑問を覚える。
それが「アンチノミー」「心のバグ」という言葉で表現されていて、「感情を持たないのが機械ならば、感情を持てばそれは機械ではないのか?」という問いになっているようにも思えます。
8位 1.0
先述した漫画「チ。」が展開する往復書簡プロジェクト『共通言語』の第一弾にあたる楽曲です。
世界三大発明である火薬、羅針盤、活版印刷のうち、作品内でも重要なワードとして登場する「活版印刷」がテーマとなった1.0。
伝統的な製法で歌詞が印刷されていくMVも大きな話題となりました。
この曲の軸となるのが「1」の正体。
歌詞のには「僕にとってあなたは1です」というフレーズがあり、世界が「0か1でしかない」ということも語られています。
つまり、この曲の主人公にとって「あなた」が世界のすべてである、と読み取ることもできますね。
「あなたにとっての1が見つかりますように」という歌詞があることからわかるように、「1」の正体については最後まで明示されていません。
曲を聴く人が、それぞれにとっての「1」=「世界のすべて」を見つけていけるような、解釈の余地がある楽曲です。
9位 境界線
アニメ「86―エイティシックス―」の第2クールオープニングテーマとなった楽曲です。
86―エイティシックス―は、戦闘機械による戦争で兵士として戦う少年と、指揮官である少女の戦いやかかわりを描いた作品。
Amazarashiは、登場人物たちが抱える矛盾や葛藤を、現実世界でも感じられるような楽曲として境界線を制作したそうです。
「惨い獣に姿を変えるのは いつの時代も守るため」というフレーズはまさに葛藤や矛盾が表現されています。
「やりたくないこともやらなくてはいけない」「正しくないと知っていてもやらなければいけない」と解釈すると、共感できる人も多いのではないでしょうか。
10位 命にふさわしい
RPG「NieR:Automata」のイメージソングとして制作された楽曲です。
Amazarashiの楽曲の中でも、特にファンから共感の声が多いのがこちらの一曲。
この曲で命にふさわしいものとして挙げられているのは「汚れた顔」「怒り」「酩酊の夜明け」「そこで死んでいいと思える一歩」。
どれも綺麗さや清純さ、希望とは離れたワードに感じないでしょうか。
「命にふさわしいもの」を「生きていくのに必要なもの」と読み替えると、絶望や怒りなどネガティブな要素こそ人が生きるのに必要であると歌っているように思えます。
絶望の中にいる人ほど、「この状況も生きていくのに必要なのだ」と思えるような楽曲です。
Amazarashiの隠れた名曲一覧
ここからは、Amazarashiの隠れた名曲をご紹介します!
1 古いSF映画
とある古いSF映画を見た人物が、この曲の主人公です。
主人公は映画の内容を語り始めます。
舞台は近未来、すべてが人工物のシェルター、人と区別がつかないほど発達したAI。
進みすぎた科学を憎む主人公は、徐々に物語の核心に迫るものの、最後には自分もアンドロイドであることに気付くのです。
この楽曲では、「僕らが信じる真実は誰かの創作かもしれない」というサビのフレーズで、自分の価値観を形成しているものは嘘や創作かもしれないことを提示します。
しかし、その後「明け渡してはいけない場所 それを心と呼ぶんでしょ」と、不確かな世界の中でも心だけは誰にも渡してはいけないというメッセージが。
さらに楽曲の最後にはどんでん返しがあり、この曲そのものを一本の映画のように味わえる構成となっています。
2 独白
Amazarashiの楽曲の中でも特異性を持った一曲です。
この曲が収録されたシングル「リビングデッド」において、この曲は「検閲済み」の状態で収録されました。
リビングデットの発売後に行われた武道館ライブ「新言語秩序」は、言論統制がテーマ。
言葉を規制されているという世界観の表現、「独白」をライブで初披露にしたいという思いから、リビングデットではほとんど歌詞がわからない状態(検閲済み)での発売となったのです。
ライブ後、「検閲解除」として歌詞全文も公開されました。
このような形で楽曲をライブ演出に組み込むというのはかなりユニークな取り組みですよね。
この楽曲を初めて知った方は、ぜひ「検閲済み」「検閲解除」両方を比べてみてください。
3 ごめんねオデッセイ
MVの表現について、ファンから賛否両論の声があがった楽曲です。
曲そのものは、Amazarashiが掲げるアンチニヒリズムの要素が強く、絶望の中の希望が色濃く表現されています。
「行けども行けども振り積む雪ばかり」という寒い世界は、絶望にまみれた現代の隠喩でしょうか。
そのなかで、「淀みない灯火」「木漏れ日」というあたたかさ=希望を求めるのは、Amazarashi特有の表現です。
これまでのAmazarashiのMVは、楽曲の言葉選びの難解さに呼応するように、意図を汲み取るのが難しいほどアーティスティックな表現が多用されていました。
しかし、この楽曲のMVでは、人間の顔がはっきり見える形で写されており、比較的明瞭な表現が採用されています。
これまでとはまた違った方向性のMVだったことで、ファンの間では「Amazarashiの新境地」「Amazarashiらしさが失われた」と賛否が巻き起こりました。
4 自由に向かって逃げろ
フルアルバム「永遠市」に収録されている一曲です。
YoutubeではMVは無く、一枚絵の状態で投稿されているにもかかわらず10万回近い再生数を誇っていることからも人気の高さがうかがえます。
自由だった子供のころは不自由そうな大人たちを見下げていた。
けれど、いざ自分が大人になると……という、誰もが一度は経験する苦い感情を詰め込んだような楽曲です。
曲の主人公は「『いつか必ず上手く行く』ならそのいつかを教えて」と、ままならない現状の中でもがいているようです。
しかし、「だけど自由だ 君次第だ あの夕陽を撃ち抜くのだって」と、現状を打破するチャンスはあり、それを掴むのは自分次第であると訴えています。
「自由に向かって逃げる」とは、敗走ではなく現状からの脱却、解放を意味しているのかもしれません。
5 マスクチルドレン
自分の意見や主張はぐっと押し込めて、感情を殺して生きる。
その様子を「マスクをしている」と例えたこの楽曲は、2020年に発表されたものですが、コロナ禍の世相にも重なる部分があります。
自分の言いたいことははっきり主張できないけれど、言いたいことをわかってほしい。
自分なんて無理だと言ってしまうけれど、誰かにそんなことないよと言ってほしい。
曲の主人公の気持ちは非常に自分勝手のようですが、案外同じように考えている人も多いのではないでしょうか。
自分の本音を隠していてはいけない、伝えなければ伝わらないという、当たり前のようでとても大切なことに気付かせてくれる楽曲です。
まとめ
今回は、Amazarashiの人気曲と隠れた名曲をご紹介しました。
アンチニヒリズムを掲げ、文学的で緻密な歌詞を世に送り出し続けているAmazarashi。
人気アニメのエンディングに起用された「季節は次々死んでいく」や、「スピードと摩擦」は、聴いたことがある人も多いと思います。
しかし、アニメのテーマソングやゲームのタイアップソング以外にも、「古いSF映画」や「マスクチルドレン」など、隠れた名曲も多数。
聴けば聴くほど、その独特の世界観に魅了され、歌詞の深さに気付かされるはずです。
今回の記事でAmazarashiが気になった人は、ぜひ実際に楽曲を聴いてみてくださいね!
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